1. 品質を決めるJIS規格と品質確保法
わが国のガソリンの品質は、JIS規格と「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(品質確保法)によって保たれています。品質確保法はJIS規格を標準品質とし、その中でとくに環境と安全に影響のある8項目を強制規格に指定しています。
強制規格を満たさない製品を販売することはできません。強制規格を満たさない製品を輸入する際は、輸入後の品質調整の計画を明らかにし、通産大臣に届け出る必要があります。
JIS規格 |
品 質
確保法 |
項目 |
基準 |
理由 |
鉛 |
検出されない |
NOxの増加防止
(触媒コンバータの保護) |
環
境
要
因 |
強
制
規
格 |
標
準
品
質 |
硫黄分 |
01質量%(100ppm)以下 |
MTBE |
7容量%以下 |
NOxの増加防止 |
ベンゼン |
5容量%以下 |
発ガン性物質の低減 |
灯油混入 |
含まない(4容量%以下) |
始動性の悪化防止 |
安
全
要
因 |
メタノール |
検出されない
(0.5容量%以下) |
金属腐食の防止等 |
実在ガム |
5mg/100ml (1) |
燃料系統の故障防止 |
色 |
オレンジ系色 |
灯油・軽油との識別 |
オクタン価
(リサーチ法) |
1号(ハイオク) :96以上
2号(レギュラー):89以上 |
走行性能の確保
(運転時の快適性等) |
性
能
要
因 |
|
密度(15℃) |
0.783以下 |
蒸留性状 |
10%留出温度: |
70℃以下 |
50%留出温度: |
75℃以上 |
90%留出温度: |
180℃以下 |
終点: |
220℃以下 |
残油量: |
2容量%以下 |
|
蒸気圧
(37.8℃) |
44〜78kPa (2)
(寒候用は44〜93kPa) |
走行性能の確保等
(始動性の確保等) |
銅板腐食
(50℃、3h) |
1以下 |
金属腐食の防止 |
酸化安定度 |
240分以上 |
ガム分の生成防止 |
(1) ただし、未洗いガムは20mg/100mlであること。
(2) 品質確保法は、44〜93kPa
2. 標準品質を保証するSQマーク
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SQマーク |
標準品質を満たす製品を扱っているSSにおいては、SQマークを任意で掲示できます。
SQは、スタンダード・クォリティの略で、このマークはドライバーに対し最低限の品質保証を表わすものと思っていただければよいでしょう。
表示を行うためには、標準品質を満たすことを10日に1回の分析で確認する必要があります。ただし、元売りから「標準品質保証書」を交付されている場合、年に1回の確認で良くなっています。
3. 実際のガソリンの品質水準は
国内のガソリンメーカーは、JIS規格を参考にクルマとのマッチングや環境問題を考慮して、各項目においてJIS規格よりさらに厳しいレベルでガソリンを作っています。例えば、
- 硫黄分について
- ベンゼン含有量について
- オクタン価について
- 蒸気圧について
- 蒸留性状について
従来、「蒸留性状50%留出温度」は、125℃以下でしたが、これでは加速不良を起こすクルマもあり、実勢とあわず、1996年に75〜110℃へ改正されました。出光ではさらに厳しい自主基準でガソリンを製造しています。
4. 添加剤の種類と働きは
JIS規格では、添加剤については具体的に記載されていません。「酸化安定度」「銅板腐食」「着色」がそれに相当しますが、添加剤の役割はそれだけではありません。
添加剤には「清浄添加剤」「酸化防止剤」「金属不活性剤」「防錆剤」「着色剤」があり、清浄添加剤はハイオクガソリンに使用されています。「防錆剤」については、元売り各社で性能にかなりばらつきが認められます。
各種ガソリン添加剤とその働きは、以下の通りです。
- 清浄添加剤
燃料パイプやキャブレター、燃料噴射ノズル、吸気ポート、吸気バルブの汚れを洗い流す効果があります。金属表面に付着したデポジットを清浄添加剤が吸着し、金属表面から分離。燃料とともに燃焼室に送られて燃やされます。
- 酸化防止剤
ガソリン中の不安定な物質を取り込み、ガソリンの酸化劣化を防ぎます。
- 金属不活性剤
酸化劣化を促進する銅などの金属分を包み込み、その働きを防ぎます。
- 防錆剤
防錆剤が金属表面に薄い膜を作り、水などによる金属の腐食(錆)を防ぎます。
- 着色剤
ガソリンは無色透明の液体で、灯油や軽油と識別するために染料を添加し、オレンジ色に着色しています(JIS規格)。
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